■今夏、初のハードボイルド小説の単行本のカバーイラスト(表紙)を描くことになった訳ですが、
今まで多くの出版関係の仕事もこなしてきて 広告の世界と比較して感じた事があります。
イラストレーターを目指すほとんどの皆さんは、
何故、イラストの仕事というとまずは出版社に足を運ぶのでしょうか?
『だって、描いたイラストが本に掲載されるって嬉しいし、永久に残るし....それにイラストが使われる業界と言ったら「本」とか「雑誌」の出版社じゃないの!?』と思ってるアナタは損してます。
何故か?それについてのお話をしてみましょう。これはかなり役立つ話でしょう。
■元々私は
イラストレーターは広告業界で活躍するものだと最初から思って、芸大を卒業した後は広告代理店や広告プロダクションへしか売り込みに行った事はないんです。
それは芸大時代の先生(現役のイラストレーターやデザイナー)達から現場の話を聞いていたからで、当時の先生が個展を開かれた時のことです...
『このB1ポスターのスーパーリアルイラストのギャラってどのくらいかわかるか?』と聞かれた時に数字を聞いて驚きました。確かに名前の通った著名な方だったので当たり前なのかもしれませんが、学生の私には驚く金額でした。
そこで、当然プロになったら広告業界で活躍するんだ!と自然に思っていた訳です。
私は卒業後、某プロダクションに入社し独立してフリーランスの現在に至るまでずっと広告用のイラストだけ描いて来ましたが、最近ネットを通して出版関係の仕事もするようになって 一番驚いたのがギャラです。
...
えっ?...と思いました。(^_^;)
特に新鋭の方はネットを通して一番オファーがよく来るのは
「フリー素材集」本の仕事だと思います。
仕事が来た事がとても嬉しくて喜ぶでしょうが、この仕事、単価は安いのに点数が膨大で 時間的にもかなりの悲鳴を上げることになるでしょう。
なにせ、素材集はいろんなタッチを掲載するために数多くのクリエイターを起用します。
そこで、低予算の中で描いてくれる人を捜す時に現役バリバリの有名クリエイターには頼みません。
低予算(数千円)でもやってくれる、仕事を欲しがっている新鋭クリエイターを見つけようとしてアナタのところにオファーが来ます。ま、チャンスと言えばチャンスですが.....受けるかどうかはアナタ次第です。
ただ、さらに激安で叩かれるところがあるんです。それはソフト販売のイラストデータ・フリー素材集の仕事です。私はした事ありませんがネットを通じてお話を頂いた人の話だと、一点につき500〜800円という数字を提示されたそうで、アホらしくて断ったそうです。そりゃそうでしょう。私もそんな超低予算な仕事は願い下げです。
点数が多いと時間ばかりかかってるのに
実際の単価が低いのでまったく儲かりません。
その間も担当者とのやり取りの時間やラフチェックなどもあるのです。更に修正もあるかもしれません。
例えば
最悪の例を挙げてみると、
100点描くのに1ヶ月近くかかったとしましょう。
単価が
800円だとしたら800×100 =
80,000円です。この金額で一ヶ月暮らせるでしょうか?
通常の例;単価
4000円のイラストを
20点を描いた場合、4000×20 =
80,000円です。
だったら単価の高い仕事で数点描いた方が実りがありますよね。
絵本の世界、というのもあります。自費出版も可能ですね。
この世界は...ちょい特殊で、もうなんでもありです。絵が描ければ通るといっても過言ではありません。
タッチも様々ですね。夢があるタッチや暗いタッチ、アート的でもデザイン的でも巧くてもへたくそでもお話にあってさえいればオッケーなんですから。絵本の世界は作者の自己満足の世界でもあります。
自分の好きなように描けると言う点では最高の世界かもしれません。
《 広告業界と出版業界の違い... 》
■出版社は売れる見込みで自腹でイラスト料金をひねり出していますが、広告業界はそうではありません。
営業さんが見積もりを立て、その企業の広告費からイラスト料金を算出しています。
なので、使用媒体にもよりますが、広告費がキチンとある場合など、場合によっては出版社より桁数
「0」が一個違ったりもします。
ま、大きな声で言えませんが....。
ただ、誤解が無いように言いますが、出版関係でも
本のカバーのお仕事などは当然「万単位」の世界ですからね!
なので万単位の仕事をするなら出版関係よりも、広告代理店やデザイン会社に営業をかけるほうが遥かに効率がイイと思います。
また、
〆日や支払い日のことも大事です。
出版社によって違いますが、ほとんど税込みで5万円とか、8万とか、10%の税込みで提示されます。
さらに、本の出版後に入金される事も多いのです。
つまり納品した月に締めて請求書を発行するカタチを取らず、掲載誌が発売される月に入金になるように締めの月を延ばされると言う可能性もあります。
ココで例を挙げますと、6月に納品した
10万円のイラストが掲載された本が10月に発売されるとします。
すると、6月に請求書は出せず8月の出版社の締め日に合わせて請求書を発行し、入金は発売月の10月になり、さらに10万円の仕事は実際アナタの口座に振り込まれた場合10%の源泉税(10,000円)と振込手数料(735円)が引かれて
¥89,265 になるのです。しかも納品してから数ヶ月後に!
小額の場合は手数料を差し引かなかったりする出版社もありますけどね。
広告業界の場合は以前ご紹介しましたが、振込以外に小切手や手形払いというのもありますが
ほとんどは納品したその月で締めてくれますし、翌月か翌々月には入金されるはずです。
しかも、交渉次第ではギャラもアップしてくれたり、源泉税分を上乗せしてくれるすばらしい所も存在します。
《 仕事的な違い 》
■まず、出版関係のお仕事は
クリエイターにお任せ的なところが多いようですね。
好きに描けるって言うところは多々あります。大枠は指定があっても描くのは自由に!と言う感じです。
納期的にも時間はけっこうあります。しかも、それほど絵がうまく無くてもセンスが無くても通る場合が多いです。ハッキリ言って私が見ても『何だこのイラスト!?』というような方も大手を振って歩いている業界です。
先に使われたもん勝ち!というところがありますね。
でも、広告業界はけっこうシビアな部分が多いです。
納期は短いのがほとんどですし、
センスも必要!
どちらかと言うとデザイン的、アート的なセンスを持っている人の方がお似合いです。
商品や企業の
利益を優先させる仕事なので、デザイナーはアーだコーだと指定して来る場合も多いですね。
描く側にとっては考える時間が少なくなるので、その方がやりやすいかもしれません。
確かにこの業界では予算が存在するので、発注する時に何十点もあると料金単価が削られる事もあります。
つまり、
グロス(大量発注)による値引きです。逆にクリエイター側から見積もりを提示する時に値引きして提示することによって仕事を受注するということもあります。つまり、
来た仕事は逃さない!という気持ちです。
例えば、1点10,000円だから10点だと10万円。でもおそらく見積もり通らなさそうだし、数が多いからまとめて9万円にしておこう!....と言った具合です。これが
グロス勘定ですね。
それに、デザイナーの方達は新しい才能を待っています!色々なタッチを欲しがっています!
けっこう優しく応対してくれるはずですし、うまく行けば他の会社を紹介してくれたりする事もありますよ。
イラストレーターになったなら 広告業界にも足を踏み入れましょう!
死ぬまでイラストレーターで日々のご飯を食べて行くならギャラの差は死活問題なので 広告業界で泳ぐのがオススメですね。
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これがプロの業界です。
ハッキリ言って
イラストレーターの世界なんてそんなにいいものではありません。
特に最近は紙媒体よりもWEBに広告を載せる割合が高くなり、イラストレーター料金もかなり低くなって来ています。
もし使えないイラストしか描けないのであれば
アナタはプロには向いていない!という現実です。
プロは全てギャラが関わって来るのです。イラストには値段が付きます。
アナタが自分のイラスト(商品)に適正な価格を付けられないのであれば プロを目指すのはあきらめなさい! ただの趣味か、非商用アートの世界で生きて行くのが懸命です。
いや、ホントに。
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